[REPORT]報告・セミナー第31回(2023年2月25日)

〈NPO法人Education in Ourselves 教育を軸に子どもの成長を考えるフォーラム〉による「発達の遅れ」連続セミナー[実例から知る、「発達の遅れ」が気になる子どもの教え方]第31回[どの子にも学ぶ力がある! 幼児期からの効果的な教育を語る](*)を2月25日(土)、埼玉県川口市の川口総合文化センター リリアで開催しました(報告/知覧俊郎)。

 

*2022年度ヤマト福祉財団福祉助成事業  後援 : 内閣府、文部科学省、厚生労働省、埼玉県、さいたま市、川口市、埼玉県教育委員会、川口市教育委員会、蕨市教育委員会、草加市教育委員会、越谷市教育委員会、北区教育委員会、豊島区教育委員会、足立区教育委員会、荒川区教育委員会、我孫子市教育委員会、埼玉県社会福祉協議会、川口市社会福祉協議会、埼玉県医師会、埼玉県小児科医会、埼玉県看護協会、日本言語聴覚士協会、全日本私立幼稚園連合会、全国私立保育連盟


【概要】

 

▶︎テーマ

どの子にも学ぶ力がある!

幼児期からの効果的な教育を語る

 

▶お話(パネラー) 保護者-Mさん(高校3年生-今春から医療系専門学校生の母親) 当事者-Hさん(社会人4年目) 指導者-河野俊一さん(エルベテーク代表/医療法人エルベ理事)

▶日時・場所 2023年2月25日(土) 9:45〜12:00 川口総合文化センター リリア(埼玉県川口市川口3-1-1)

▶参加者 81名(保護者約60名、教育関係者10名、保育関係者1名、福祉関係者1名、その他 埼玉県、東京都、神奈川県、千葉県、栃木県、群馬県、長野県に在住の方々)

▶参加費(資料代等) 1,500円

 


 

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 「子どもたちの長期的な成長記録」という貴重な情報を参考にしながら、子どもへの適切な接し方・教え方、子育ての目標、学校との信頼関係づくりなどを具体的に考える、それが私どもの「発達障害」セミナーの特徴です。

 

 第31回を迎える今回初めて、シンポジウム形式のプログラムを企画しました。保護者、当事者、指導者の3人に講師をお願いし、それぞれの立場と体験から「発達障害」をもつ子どもの成長とそこから得られた教訓などについて話し合ってもらいました。Mさんが保護者(母親)の立場から、社会人4年目のHさんが当事者の立場から、そしてエルベテーク代表・河野俊一さんが指導者の立場からそれぞれ問題提起し、話を進めました。

 

 世の中には、保護者や当事者が自分の経験を語る、あるいは医師などの専門家が「発達障害」の症状・状態や診断基準を伝える、そうした「発達障害」セミナーはたくさんありますが、このシンポジウムのような多角的で実践的な内容・構成にはなかなか出会わないのではないでしょうか。

 

 シンポジウム終了後のアンケートには次のような感想が記されていました(詳細はアンケート欄を参照)。

 

「当事者、先生の立場から話を聞けてよかったです。学習で大切なポイントを聞けたと思います」(小1の保護者)

「この様な話を聞く機会はなかったのでとても貴重な時間だった」(教育関係者)

「特別支援教育に長らくかかわってきた実績が今回のシンポジウムにつながっているように思いました」(教育関係者)

 

 母親Mさんは第15回、第18回でも講師として報告してもらいましたし、Hさんは母親さんが講師を務めた第17回の場で子どもの立場から発言してもらったことがあります。何回もセミナーに参加されている方にとっては既知の情報もあったかもしれません。しかし、ある特定の成長記録を追いかけているだけでは見過ごされやすい大切な関わり方のポイントが、保護者、当事者、指導者の3つの視点によって明確に浮かび上がったのではないかと思います。

 

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まず、幼い子どもを「学べる状態」までひきあげる

 

 このシンポジウムで紹介された成長記録は、2時間のプログラムではとうてい紹介できない長いスパンに渉る内容ですが、次の2つのテーマに絞るとわかりやすいのではないかと思います。

 

(1)「発達の遅れ」をもつ子どもを「学べる状態」までひきあげるために大人はどうすればいいのか

(2)「発達の遅れ」をもつ子どもに対して、大人はどのような目標をもち、何をどのように教えていくのか

 

 (1)は、主に就学前後の子育てに関するものですが、特に「学べる状態」を意識することの大切さを強調したいと思います。各講師から、「目を見て聞く・話す」、そして「受け入れる力・姿勢」が成長を促す鍵になることが指摘されました。

 

 母親のMさんは大切なポイントについてこう言いました。

 

「幼少期は基本的に『受け入れる姿勢』を身につけさせることがとても大事ではないかと思います。基本的なことですけれど、目を見る、目を見て教わる。本人の目を見て注意しないとその注意は絶対入っていないです。後ろから注意してもぜんぜん本人に届いていません。前に回ってきちんと目を見て『これから言うことを聞きます』という感じで話をしないと本人には入らないと思います」

 

 親子のコミュニケーションを通して「受け入れる力・姿勢」、あるいは「応じる力・姿勢」を身につけさせることが子育てのスタート地点だという指摘です。

 

 中でも、「本人の目を見て注意しないとその注意は絶対入っていないです」というMさんの言葉は示唆に富んでいます。子どもの目をチラッと見るのではなく、しっかり見て話したり聞いたりする、そのように子どもにも促す……、こうした接し方によって大人の本気が伝わり、次第に子どもに「素直に物事を受け入れる力・姿勢」が生まれ、「学べる状態」へと導かれるのではないでしょうか。

 

「受け入れる力・姿勢」は、学習(いわゆる教科学習)から学校生活全般、生活面、性格面まで幅広く成長の土台となる力であることはこのセミナーで何度も確認してきた通りです。

 

「学習を通してルールを守ることをとても大切にしていました」

 

 ここで、Mさんの報告を参考にしながら息子・Mくんの幼児期の様子を振り返ってみましょう。言葉の遅れ、多動、こだわり、癇癪などが課題としてありましたが、3歳ぐらいまで「ばー」「うー」という言葉にならない言葉を発していたそうです。幼稚園に入る際の面接では、色や形、動物の区別もまったくわからず、その後の3歳児健診で「中等度の自閉症」、また他の病院では「広汎性発達障害」と言われました。

 

 特に、両親を困らせたのは、見かけるとすぐに近づくエレベーターやエスカレーターへのこだわり。ボタンを誰かが押してしまうと、パニック状態になっていました。Mさんはわが子の手を押さえていないととても外を歩けません。「手を離さないことと、エレベーター、エスカレーターにはなるべく近づかない、見せないようにしていました」とMさんは当時を振り返りました。

 

 その頃、Mさんは息子さんを民間の療育施設に通わせていましたが、そこのスタッフから「あまり無理をしなくていい」と言われてしまいました。発語については、「一生、話すことはないから、会話はできないと思ってください」と伝えられたそうです。結局、親子で体操をしたり、動物と触れ合ったりする時間を過ごしました。

 

 さて、息子のMくんのほうですが、学習を通して「受け入れる力・姿勢」を身につけ、努力する習慣が定着するにつれ、それまでの状態から大きく変わっていきました。

 

 Mくんが学習を始めるにあたって課題として指摘された発音・発語の練習からスタートです。50音が出ていなかったため、口の周りの筋肉を使いながら追唱の練習に取り組みました。3ヶ月ほど経った頃、「あ」と「り」、「あり」と言えるようになり、それから二語文となっていきました。

 

 そして、小学校入学に際し、登校から下校までの付き添いが条件で普通学級に進むことができました。入学後の苦労についてMさんは振り返りました。

 

「入学してから大変だったのは、学校で椅子に座ることができない、歩き回ってしまう。こだわりがとても強く、順番とか、色とか、場所とか、勝ち負けとか、そういうことにものすごいこだわりがありました。一般的なルールや手順もわからず、つまらなくなると徘徊してしまうような感じで過ごしていました」

 

 学校でMさんは席の横や後ろに待機し、Mくんが動きそうになるたびに座らせたり、「いけないよ」と注意したり、こういう時はこうするという手順やルールをいろいろ教えながら付き添っていたそうです。

 相変わらず大変な子育てだったわけですが、エルベテークで教えてもらった接し方・教え方をMさん自身が模倣していくことによって光明が差すようになってきます。

 

「立ち歩いて連れて帰ってきて目を見て『いけません』『やりません』と伝えて、正しいことを教える。それができれば、『それでいいです』と伝える。そうすると、本人のできることが増えてきます。目を見て話をする、これが一番大切で、目を見ていないと言った注意も絶対聞いていないです。目を見て話すと伝わる。そういうことを実感していました」

 

「学習が進めば、認知力が高まってできることが増えていくという思いでやってきました」とMさんは学習をおろそかにしなかった接し方について振り返ります。

 

「学習を通してルールを守ることをとても大切にしていました。漢字の筆順をしっかり守る、マスの中にきちんと字を収める、決まった時間にきちんと学習をする。足し算・引き算も何度も同じ問題を繰り返し反復練習できるようになってきました。小学校の時に大切だと思ったことは、息子にわかるように手順をきちんと教えて家庭で前もって予習して実技などは練習して臨むことでした」

 

 図工や音楽の実技についても、家で親子一緒になって一生懸命練習してから授業に臨ませたとのことです。

 

学習開始以前と学習開始以降を比べれば明らかな変化

 

 息子のMくんは、15年近くエルベテークで学習を続けています。当初は椅子に座ることもできなかったため、指導者が抱っこし、それから「目を見て」と伝えながら教えていったそうです。なんでもないシーンのようですが、このシーンの意味について河野さんが詳しく分析してくれました。

 

「発達上のさまざまな課題があったものの、抱っこは受け入れてくれた。中には、抱っこすることもできないお子さんもたくさんいます。子ども、スタッフのお互いがけがをしてしまうのではないかと思うほどです。Mくんを抱っこできたというのはいろんな可能性があるということです。きちんと教えれば、受け入れて応じてくれる。学習によって言葉が出るか出ないか、それはわからないけれども、音を出すことはできる可能性がある……」

 

 現在、高校3年生です。推薦入試(数学・英語の筆記試験と面接)を受けて合格した医療系の専門学校へ4月から通うことになっています。この大きな変化についてセミナーではこんな興味深いエピソードも話し合われました。

 

河野 「エレベーター、エスカレーターへのこだわりについていまはどうですか?」

Mさん 「以前、本人に訊いてみたんです。『いまでもエスカレーターやエレベーターは好き?』と訊いたら、まったく興味がないそうです。『健康のために階段を使ったほうがいいよ』という話を本人がしていましたので、まったく大丈夫です」

 

 過去と現在の情報を比べれば明らかなように、大きな変化を生み出したのが教育・学習の力ではないでしょうか。特に、幼児期に練習やコミュニケーションの工夫を続けながらMくんを成長させ「学べる状態」へ引き上げたことが成長のスタートラインになったと言えます。親の努力、そして子どもの努力が成長の鍵を握っていることは間違いありません。

 

「してはいけないこと」に気づく

 

 さて、Hさんのほうはどうでしょうか。幼児期には言葉を発することができず、年中5歳の時に「自閉症、ADHD」と診断されたHさんです。注意散漫で落ち着きがなく、緊張すると片足でピョンピョン跳ぶこともあったようです。風邪や歯の治療に困った時期もありました。

 

 そんなHさんの振り返りが興味深いです。

 

「(不適切な言動をしている)その時に何を考えていたかというと、特に何かを考えていたわけではなかったかなと思っています。好き嫌いや良い悪いといった考えはまったくなくて、むしろ生理的と言いますか、本能的な、そうしなければ気が済まないという気持ちで行動していたように、いま振り返ると感じます」

 

「発達の遅れ」を抱える子どもたちはどのような気持ちで過ごしているのか、これは興味深い問いですが、語られる機会は少ないと感じます。実は、生理的・本能的なものだった……、このHさんの率直な指摘は貴重な証言と言えるのではないでしょうか。

 

 Hさんは続けてこう話しました。

 

「障害児教育の中でよく言われているような、『好きなことをさせてあげましょう』とか『何か理由があってその子はやっているんです』というような話は、個人的な意見ですけれども、やや疑問に感じることがあるかなと思います。もし自分が子どもの頃に『好きなようにさせてあげましょう』というような教育をずっと受けていたら、『してはいけないこと』に気づくことさえなかったのかなと、いま振り返ると強く感じるところです」

 

 こうしたHさんの指摘に関連して河野俊一さんは次のように問題提起しました。

 

「私どもの教室ではHさんを含め、社会人になった卒業生がたくさんおります。言葉で説明できるようになった子どもたちのほとんどがそうなっているわけですけれども、1人残らず全員、Hさんが言ったことと同じことを言うわけです。『自分ではどうしようもなかった』と。私たち大人や親、指導者が考えるべきことは発達面での遅れを『その人の特性・個性なんだ』と考えるか、『改めていかなければいけない課題だ』ととらえるか。スタート地点が違ってくると、結果もやり方も大きく違うと思います」

 

「改めていかなければいけない課題だ」ととらえる以上、そこには責任や指導上の工夫が求められますが、そうした一連の取り組みこそあるべき教育の姿なのではないでしょうか。

 

学習の促し方・進め方について

 

 実は、Hさんは、大学時代、エルベテークのアルバイト講師として子どもたちを教えたことがあります。当時、小学校高学年だったMくんも2年ほど担当として教えました。そのため、いまのHさんは当事者の視点と指導者の視点の両方から学習の大切さを痛感しています。

 

 シンポジウムでは、学習の際に大切なこと、やるべきこと、学習によって得られることについて2点を指摘しました。

まず、ルール(学習の目的のひとつです)の徹底です。

 

「子どもとか、特に幼少期の頃というのは良い悪いがまだ明確にわかっていない頃なのかなと考えています。そういった状態の子どもに対して、仮に理解ある大人として『なんでそんなことするの?』、つまり『なんでそんな悪いことしているの?』と対話を通じて聞き出そうとしても、おそらく本人も説明できないと思うんですね。なぜなら、そもそもそれが悪いということをわかっていない。

 そうであるなら、しっかり『あれはしません』、『これはします』というルールを設けて、破ればそこで注意して、守れれば褒めるということを繰り返し、子どもに徹底してあげることによって、より本人の中にルールを守ること、良いこと悪いことがだんだん根づいてくると思います。そして、『これは良いことだから僕はこれをする』、もしくは『これをしない』というような理由づけが本人の中でも説明できるようになってくるのではないかと思っております」

 

 これに関連して、Hさんは自身のエピソードを紹介しました。足し算や引き算の学習時間に問題が難しくて大泣きしてしまった時のことです。その時、エルベテークの先生は余計な言葉は挟まずにただ見つめているだけ。そんな時に「泣かないよ」といくら言っても指示が通らないことは承知していたのです。そして、泣き止んだ時に「もういいですか」の一言だったそうです。

 

 そして、河野さんも補足説明する形でエルベテークの指導の一端を披露してくれました。

 

「子どもたちが教室の中でわーっと騒いでいると、先生が子どもの目を見て『いつまでそうしているんですか』と訊くわけです。子どももなんとなく良くないことだいう気がしているわけで、先生が『いつまでそうしているんですか。小学校に入ってもそうしているんですか』と言うと、子どもはハッとして『このままではいけない』と気づく。先生が『だったら、先生も教えてあげる。お母さんも教えてあげる。あなたも頑張って練習しなさい』と言って、練習を繰り返す……」

 

 子どもの自分勝手な様子に振り回されるのではなく、「ここは教える場」「ここは教わる場」という認識が大人の側に徹底されていたのです。

 

子どもに影響を及ぼす親の学び

 

 2点目は、親の変化による影響です。適切な接し方・教え方を学んだ親が明らかに変わっていった姿についてHさんはユーモラスに語ります。

 

「学習によって子どもに親が振り回されるんじゃなくて、親が子どもをしっかりと導いていけるようになったのではないかと思っております。母に聞くと、以前の私は嫌なことがあると地面に寝っ転がって大暴れする子だったようです。そうすると親やたいていの大人の方々は『そっとしてあげましょう』と腫れ物扱いをすることが多かったようです。結果的にどうなったかというと、それで落ち着くわけもなく、悪く言えば味をしめてより暴れるようになっていったというようなところがあります。

 初めは、そうやって子どもに親が振り回されていたんですけれども、エルベテークに通ううちにだんだん親の態度が変わってきまして、具体的に言うとエルベテークの厳しい先生のようになってくる。当時はそれがひじょうに衝撃で、それまで優しい親だったんですけれども、いつ頃エルベテークに入社されたのかなというような、『勘弁してくれ』と思いながら、日常生活を送ってはいたんですけれども……」

 

 Hさんの母親はふだん優しい態度ながら、学習時間になると「学習を始めます」「座ります」のように口調が変わり、です・ます言葉になったそうです。親子の間に適度な緊張感が生まれました。

 

「親の変化のおかげで結果的にルールの徹底や学習の取り組みを受け入れやすくなったのかなと感じています。親が変わることで子どもである自分も変われたのは大切なことだったのではないかと思います」とHさんは振り返りました。

 

 ところで、Hさんは大学卒業後、一般企業の営業職を務めたあと、学習・教育の大切さを痛感し、昨年からエルベテークで正社員として働いています。

 

「大学へ入って非常勤で働き、今回改めて正社員として教えてみて本当に思うのは、『子どもの大変さよりも何倍も親のほうが大変なんだな』、もしくは『先生のほうが大変なんだな』ということでした」

 

「がんばる」というキーワード

 

 シンポジウム後のアンケートには、講師の発言に啓発されたと思われる感想がいくつも書かれていました。

 

「問題行動を『特性・個性ととらえるか』『改善しなければならない課題ととらえるか』、この違いは大きい」(小6の保護者)、「親が子供にふりまわされるのではなく、子どもを促していかなければならない、親が変わることが大事というお話に共感しました」(中2の保護者)、「学習は知識をつめこむことだと、大人側が思っていることが問題かと思います。結局、大人が『社会生活を送るための術を身につけるために学習する』ということに気づかなければ、子どもを改善しようとは考えないのではないかと思います」(高2の保護者)、などです。

 

 最後にシンポジウムでの講師の発言をまとめると、そのキーワードは「頑張る」ではないかと思われます。学習を続ける、習慣をつくる、これらの作業の根底には努力があるからです。

 

 いま、「頑張る」という言葉・姿勢について「子どもはストレスを感じるのではないか」と首をひねる方がいます。しかし、頑張り終えた子どもの晴々とした表情を見た大人ならば、「かわいそうだ」ではなく、「よく頑張ったね」と声をかけてほめるべきだったと悟るのではないでしょうか。

 

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 第31回は初めて3人の講師を招いたシンポジウム形式での開催となりましたが、たくさんの方に参加していただきました。

 なお、行政・教育・医療・福祉・保育関連の24団体から後援名義を受け、また、埼玉県内、東京都内、千葉県内などの教育委員会約60の協力も得て、該当地域の小中学校、幼稚園などにチラシを配布しました。ありがとうございました。

 

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【参考 アンケート】(全部で47通。そのうち、明らかな誤字・脱字を訂正して原文のまま紹介します)

 

質問-1「日頃、子育て・教育で気になっていることは?」の回答

 

・就学前の保護者の声

 

「子供が成長してくるにつれて扱いにくくなっていく気がする。むずかしい」(5歳の保護者)

 

・小学生の保護者の声

 

「現在、小1で通常級に在籍しているが、勉強の遅れが明らかで、2年生以降も通常級でやっていけるか気になる」(小1の保護者)

「問題の文章を読まない。思い込みで行動する」(小1の保護者)

「勉強は集中する時間が短い。すぐにあきる」(小2の保護者)

「「やらない」「ダメ」と言ったことばかりする。話してもすぐに忘れる。誤字、脱字、音読の間違いなどのやり直し、書き直しを嫌がり泣く。毎日それに付き合っているのでこちらのメンタルが持たない」(小2の保護者)

「かんしゃくがたまにあり、その時の対応に困っていた」(小3の保護者)

「小学校で浮いてしまうことが多い子供に対して、学校に求めること、育て方について悩んでいます」(小5の保護者)

「学習習慣の構築と学力向上するにはどうしたら良いか」(小6の保護者)

「毎日のようによくない事ばかりで、どうしたら1つでも良くなるか 落ち着いて(気持)良い事と悪い事を考えて行動して欲しい!」(小6の保護者)

「毎日進んで学習できる様になったが、まだまだ独り言やぴょんぴょんとびがやめられない」(小6の保護者)

「4年生の終わりから嫌な事に対して逃げる様になり、嫌な事は嫌だと頑なになっていく。学校へも行かなくなる。何に困って、何が嫌だばかりを探そうとしていた。親が子を傷つける事ばかりをしていた」(小6の保護者)

 

・中学生の保護者の声

 

「同じ時間に同じことをしないと気が済まないのが気になっています」(中2の保護者)

「聞くとしてはいけない事だとは言うが、実際にはやめられない」(中2の保護者)

 

・教育関係者の声

 

「学校教育で特別に支援が必要とする子に対しての指導の仕方」

「特別支援児に応じる力をつけさせるにはどうしたら良いか、そして、自立した社会人として、成長させるにはどのようにしたら良いか」

「学校の現場でこれでいいのか?と思うことが日々ある。診断名がついているから、できないというのはやめて、できることをしていくようにしたい」

「無気力な子が多い」

 

●質問-2「講師のお話の特にどの部分に共感されましたか?」の回答

 

■保護者・Mさんの話について

 

・就学前の保護者の声

 

「子供とこだわりが似ており、幼少期のお話は大変共感いたしました。小学校への毎日の付き添いは親の努力がどれほど必要だったか。私も息子のために行動できる親になりたいと思いました」(4歳の保護者)

「母親が小学校の授業に参加して、わが子を指導したことはすばらしい。なかなかできないことです。親が我が子を「なんとかしたい」という気持が大切です。将来のことを考えたら、現状のことを改善する」(5歳の保護者)

「もっと自分たちが障害のことを知らなければならないと行動したこと」(5歳の保護者)

 

・小学生の保護者の声

 

「エレベーター・エスカレーターを見つける前に親が「見せない、近づかせない」と予防策をはってやるという所に共感した。学習を通してルールを学ぶ(反復練習、かき順)ことを徹底した所も共感した」(小1の保護者)

「目を見て、教える、注意はとても大切な事だと思いました。私自身忘れがちだったので、このことを毎日行いたいと思います」(小1の保護者)

「自営業をされているのにしっかりお子さんと向きあう時間を持ちつづけたことがすごいと感じました。大変な努力をされたんだろうなぁと想像できました。お子さんが2人いるのにどのように向き合う時間を捻出していたのか、もっと話をききたかったです。私もがんばりたいです」(小5、小2の保護者)

「目を見て話す。正面からが大事ということ。横から言ってしまうことが多かったので反省しました」(小3の保護者)

「うちの息子も、エレベーターのボタンにとても興味があったので、うなずいて聞いてました。まだ少しこだわりがありますが、成長につれて気にもならないということに少し期待しています」(小4の保護者)

「目を見て話す。声かけ(いけません。いいです等など)学校に付き添いで通ってたのがすごいと思います。なかなかできません」(小6の保護者)

 

・中学生の保護者の声

 

「注意するときは必ず目をみる 学習時間の徹底 反復練習を続ける」(中1の保護者)

 

・高校生の保護者の声

 

「お子さんに、前持って手順を教えて、学校で見通しを持って取り組みができるようにしていたというエピソードを聞き、その親の努力の1つ1つが現在のお子さんにつながっているのだなぁと思います。親の熱意が全てですね!」

 

・教育関係者の声

 

「学習すれば、できることが増える」

 

■当事者・Hさんの話について

 

・就学前の保護者の声

 

「Hさんから子どもの立場からの意見を聞くことが出来たのは非常に貴重な経験になりました。問題行動に対して、当時の気持ちは「しないと気がすまない、特に理由はなかった」と聞き、ただ「子供の振り回されない、親が子供を導く、ルールの徹底」」(4歳の保護者)

 

「親の努力があっての自分の成長を自覚できたこと、すごい。努力をつづけること、できないことですが、日々の習慣をやる。学習を通じて」(5歳の祖父)

「親が変わること」(5歳の保護者)

「基本的なことができていないとどれだけつめこんでもポロポロおちていく、みにつかない」(5歳の保護者)

 

・小学生の保護者の声

 

「当事者、先生の立場から話を聞けてよかったです。学習で大切なポイントを聞けたと思います。学習で大切なポイントを聞けたと思います」(小1の保護者)

「魔法のようなすぐに覚えられる学習はなくくり返し学習する事」(小1の保護者)

「反復練習をしっかり守っているのがすごい。成長された姿を見られて嬉しかったです」(小2の保護者)

「とてもお話しがお上手でとても聞きやすかったです。お子様側の「ルールを守る」「反復練習」の大切さが改めてわかりました!! 先生のお話しで、なぜ大切なのかはっきりわかりました」(小3の保護者)

・自分のことをしっかり過去・現在しっかり理解している。とにかくルールを守ること。親ががんばることが大事」(小3の保護者)

「子供より親が大変だというお話にとても共感しました」(小5の保護者)

「子供はどう思っているかを聞けてよかった。何を考えて、行動するのか不思議に思っていましたが、好きでやっていると思ってたが、やらなければならない、やめられない気持ちなんだなぁと知り、子供の気持に近づけたと思いました」(小6の保護者)

「当事者の方の話はなかなか聞けないので、貴重な時間でした」(小6の保護者)

「当事者と指導者、とても目が覚める思いでした。特に、衝動が我慢出来ないのではなく、「そうしないと気が済まない。」すごく納得と言うか、消化出来ました。諦めという言葉が初めて前向きな言葉に思えました」(小6の保護者)

 

・中学生の保護者の声

 

「親が子供にふりまわされるのではなく、子供を促していかなければいけない、親が変わるからことが大事というお話に共感しました」(中2の保護者)

 

・教育関係者の言葉

 

「ご自身の立場から、発達障害について語る内容に説得力を感じました ・ルールの徹底、時には厳しく始動することも必要 ・善悪の区別(しない、いけない、いいよ) ・しかる、ほめる」

「この様な話を聞く機会はなかったのでとても貴重な時間だった」

 

・福祉関係者の言葉

 

「幼い頃は、良い悪いという判断をする、という意識すらなかったということに驚いた。良い悪いという基準を教えていくことの重要さに改めて気づかされました」

 

■指導者・河野俊一さんの話について

 

・就学前の保護者の声

 

「「特性ととらえるか、課題ととらえるかで、その後の人生は大きくかわる」この言葉で私と息子の人生も変わってきていると強く想います」(4歳の保護者)

 

・小学生の保護者の声

 

「家でどれだけ学習習慣が持てているか、これを子どもの時につくれるかが大切だということ」(小2の保護者)

「できたことを褒める! 最近この部分を忘れていたような気がします。改めて、話をきく姿勢を正し、できたら褒めるをくり返していきたいと思います」(小5、小2の保護者)

「どんな時も反復・ルールを守ることをくり返し行っていくということが大切 「たし算・かけ算できる子が、生活のルールができないと思いますか?」 目を見て善し悪しを伝える」(小3の保護者)

「「親が覚悟をもって子どもと向き合う」 しっかり覚悟して向き合おうと思います」(小3の保護者)

 

・中学生の保護者の声

 

「親子で話し合って崩れた時に挽回したお話に共感しました。失敗の連続の中で考えて工夫して努力したお話に共感しました」(中2の保護者)

「28年間1000人以上の子どもをみてきたということ、その事実からのコメントに共感した」(中3の保護者)

 

・教育関係者の声

 

「特別支援教育に長らくかかわってきた実績が今回のシンポジウムにつながっているように思いました」

「教育者としての芯の強さ」

 

・福祉関係者の声

 

「できないことを指摘するのではなく、できたらしっかりほめる、ということの大切さ」

 

●質問-3「『子育て/指導のために役立ててみよう』と思ったことはなんですか?」の回答

 

・就学前の保護者の声

 

「「ルールの徹底」 まだ息子は小さいので、親である私が手を抜いたり気を抜くと、あっという間にできるようになったことができなくなってしまうのを痛感しています」(4歳の保護者)

「日々の学習を続けていくこと」(5歳の保護者)

 

・小学生の保護者の声

 

「上の子が来年4年生になることもあり、今日のシンポジウムでくり返し話された「一人で学習ができる姿勢をつくっていく」姿勢を次の3年4年で少しずついしきして「一人で計画を立てて、実行(学習)していく」家庭学習を続けようと思いました」(小3の保護者)

「日々大変ですが、家庭学習を継続してがんばりたいと思えた」(小4の保護者)

「失敗や反省ばかりで心が折れそうになりますが、ここで負けずに工夫して、改善し、すこしずつ階段を登ってこうと思います」(小5、小2の保護者)

「厳しく教育した時に「かわいそう」と言われて、心が揺れたこともありましたが、ルールを守ること、反復することの大切さを改めて痛感しました。これからがんばれそうです」(小5の保護者の声)

 

・教育関係者の声

 

「きっぱりと言うこと」

「いけないことは×ときちんと伝えること」

 

・保育関係者

 

「できた時に小さなことでも「それで良い」と伝えること」

 

・福祉関係者の声

 

「なにげなくても会話を増やす。ささいなことでも気にして聞いてみようと思っています」

 

●質問-4「教育・療育の現状についてのご意見・提言をお聞かせください」の回答

 

・就学前の保護者の声

 

「人手不足を重々承知していますが、発達障害の子をサポートできる体制にスムーズに移行できるよう、幼稚園/保育園の体制充実を期待しております」(4歳の保護者)

「発達障害者が増えている現状。原因はなにかをあきらかにしてほしいものです」(5歳の保護者)

「「1人で何かをする力をつける」練習をしてきた子と、してこなかった子には明確な差があります。社会へでてから何かとつまづきになります。特例で働いていて強く感じます」(5歳の保護者)

 

・小学生の保護者の声

 

「学校は家庭学習を厳しくやっているから、学校で疲れていると思われている。親が一生懸命やっているのをやりすぎだと思われている。なんで、一生懸命になるのかを考えてほしい」(小1の保護者)

「専門知識のない療育施設が増えているようにかんじる」(小1の保護者)

「重心の子どもたちの看護をしています。自分の子どもにはダメなことはダメと強く言いきかせていますが、職場ではそのような対応の流れになっていません。自分の子どもたち以外の子どもたちにもよりよく暮らせるために成長できる関わりができたらなぁ……と考えています」(小5、小2の保護者)

「比較的恵まれた環境(担任の理解、スクールカウンセラーの対応)ではあるが、安定していない。移動や退職によって、理解者を失うリスクは低くないと感じています」(小5の保護者)

「今は、ムリをさせない療育が主流のようですが、なぜ、課題がある子供たちにはムリをさせないのか! どの子にも学習を通して努力する経験が必要で、それが課題がある子にも重要で必ず成長につながる事を多くの方に知ってもらいたいと切に願います」(小6の保護者)

 

・中学生の保護者の声

 

「今何かすればこの子は変わるという想像力を持って親も指導者も対応しなくてはと、改めて感じた」(中3の保護者)

 

・教育関係者

 

「エルベテークの指導法を学校教育の中に取り入れていきたいものです」

「現在、小学校1年の担任、特別支援コーディネーターです。学校では生活指導が先ですが、学習を柱に療育できることを知りました。たいへん勉強になりました」

「エルベテークの教育を学校現場(特別支援教室など)でもできないかと思っています」

「やはり、無理をさせないとか、嫌なことはやらなくていいよとしてしまうのはよくないことだと強く感じた」

 

・保育関係者

 

「現場の指導者が専門的な知識をあまりもっていないように感じる。今回教わったような考え方が広まればよいと思った」

 

 (報告/2023年5月16日 知覧)

 

■次回(第32回)

 

[テーマ]

アメリカでは巡り会えなかった指導法で娘は大きく成長した

親とアメリカ・日本の指導者3者によるシンポジウム!

 

[プログラム](シンポジウム)

パネラー

 保護者-Kumamotoさん(カレッジ1年生の母親/ロサンゼルス在住)

 指導者-Kishiwadaさん(アメリカ・エデュケーション)

 指導者-河野俊一さん(エルベテーク代表/医療法人エルベ理事)

 

[日時] 2023年7月1日(土) 9:30〜11:45(受付開始9:30〜)

 

[会場] 川口駅前市民ホール(埼玉県川口市川口1-1-1)

 

[定員] 100名(保護者、教育・療育関係者、医療・福祉関係者、市民など)

 

[参加費](資料代等) 1,500円

 

*コロナ禍の状況次第で、日時・定員等の変更の可能性があります。

 

撮影 堀)