[REPORT]報告・セミナー第28回(2022年9月17日)

〈NPO法人Educationin Ourselves 教育を軸に子どもの成長を考えるフォーラム〉による「発達の遅れ」連続セミナー[実例から知る、「発達の遅れ」が気になる子どもの教え方]第28回[「発達障害」と診断後、学校が大好きな兄弟になるまで 父親と母親がスクラムを組んで家庭学習を支える兄弟(小4、小2)の成長記録](*)を9月17日(土)、埼玉県川口市の川口駅前市民ホール フレンディアで開催しました(報告/知覧俊郎)。

 

 *2022年度赤い羽根共同募金(埼玉県共同募金会)助成事業 後援:内閣府、文部科学省、厚生労働省、埼玉県、さいたま市、川口市、埼玉県教育委員会、川口市教育委員会、蕨市教育委員会、草加市教育委員会、越谷市教育委員会、北区教育委員会、豊島区教育委員会、足立区教育委員会、荒川区教育委員会、我孫子市教育委員会、埼玉県社会福祉協議会、川口市社会福祉協議会、埼玉県医師会、埼玉県小児科医会、埼玉県看護協会、全日本私立幼稚園連合会、全埼玉私立幼稚園連合会、全国私立保育連盟


【概要】

 

▶︎テーマ

「発達障害」と診断後、学校が大好きな兄弟になるまで

父親と母親がスクラムを組んで家庭学習を支える兄弟(小4、小2)の成長記録

 

▶お話(体験発表) 小4・小2のMさん夫婦

▶進行・解説と質疑応答 河野俊一さん(エルベテーク代表/医療法人エルベ理事)

▶日時・場所 9月17日(土) 9:30〜12:00 川口駅前市民ホール フレンディア(埼玉県川口市川口1-1-1)

▶参加者 50名(保護者約30名、教育関係者9名、保育関係者1名、その他 埼玉県、東京都、神奈川県、千葉県、群馬県、栃木県在住の方々)

▶参加費(資料代等) 1,500円

 

 

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 前回のセミナーでは、講師になっていただいた母親に加え、会場から父親が発言され、わが子の「発達の遅れ」が判明した際の気持ちやその後家族が続けた努力について父親の視点から感想を述べてもらいました。

 

 狙いは、このセミナーで講師の方々から何度も指摘された保護者の関わり方に関する重要な2点を共有することでした。

 

(1)子育てにおいて父親と母親が異なる接し方・教え方をしていては子どもが混乱してしまい、「どうしていいか」がなかなか伝わらないので、父親と母親が同じ価値観をもって同じ方向をめざすことが大切であり、効果的

(2)とはいえ、事情が異なる各家庭で実際にどのような関わり方(家庭学習のやりかた、学習時間の確保、役割分担、学校との信頼関係づくりなど)が可能なのかを模範的な実例の中から参考にし、実践してもらうこと

 

 前回セミナーが参加者から好評を博したため、今回は父親と母親(共働きのMさん夫婦)のお二人に講師になっていただき、冒頭からそれぞれの視点による成長記録の報告という形になりました。

 

 そして、二人の息子をもつ保護者ということもあり、特に兄弟二人の成長記録、兄弟相互の影響、父親と母親が彼らにどのように関わったかという点に焦点を当てました。参加者に兄弟姉妹のお子さんをお持ちの保護者が少なくないだけにいろいろな点で参考になると思われます。

 

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兄の姿を見て弟も大きく変わる

 

 セミナー後のアンケートに「二人のお子さんの子育てに頭が下がります」といった感想がいくつも書かれていましたが、どのような経緯でMくん兄弟二人そろって幼児期から家庭学習に力を入れるようになったのでしょうか?

 

 もともとは、知的遅れも指摘された弟の状態が心配で、両親は教室(エルベテーク)に相談することにしたそうです。しかし、相談を受けに行った教室からは次のように説明されました。

 

「もし弟が力をつけていったとしても、お兄ちゃんが落ち着きなく、思ったことをすぐ口にする状態のままなら、弟もお兄ちゃんの様子をまねる可能性がひじょうに高いのではないかと思います」

 

 セミナーでも相談の時の兄弟二人の様子が語られました。15分間ほど先生の話を聞いている弟の周りでウロウロする兄でしたが、「あなたもおいで」と誘われ先生と対面すると、静かに椅子に座って練習に取り組み始めたとのこと。その変化に両親も驚きました。セミナーで紹介された父親Mさんの感想は次の通りです。

 

「そういうやりとりがそもそもできるんだというのが発見でした。椅子に何十分も座って何かをすることができたのが驚きでした」

  

 こうして兄弟一緒に学習を受けることになったのでした。いまから6年近く前、兄が年少、弟が2歳4ヶ月の時。

 

 現在、小学4年生になった兄は挨拶がじょうずにできる、本好きな少年に育っています。「妻がよく図書館から本を借りてきて読ませているんですけれども、自分でも小学校の図書館から本をよく借りてきます。2年生、3年生の時は年に500冊ほどの本を借りて読みました」と父親は話しました。

 天気の本、科学の本、物理の本など、興味の範囲は広く、時には父親に向かって「お父さん、これ知っている?」と尋ねることもあるとか。

 

 小学2年生になった弟のほうも兄の良い影響を受けて本好きな子どもになりつつあるようです。「幼稚園時代は友だちと関わることはほとんどなかったのですが、いまは小学校に入ってからは仲の良い友だちもでき、友だちと関わりながら楽しく学校へ行っています」と母親。

 

 兄弟二人が幼児期の状態から望ましい方向へ変わったのは、いうまでもなく教育・学習のおかげだと言っても差し支えないと思います。

 

落ち着きのない兄と会話が成り立たない弟

 

 幼児期の話に戻りますが、兄弟でそれぞれの癖・傾向が異なっていました。兄のほうは車の往来などを気にすることなく家を飛び出し、また、外出先のショッピングセンターでは後ろを振り向きもせずに室内を全力で走り回り、行方不明になることもありました。

 

 「それで、私は彼の手をつないで行動するんですけれども、手と手をつなぐと振り払ってしまうんですね」と父親のMさん。大変だったと思われます。

 

 家の中では、加湿器やブルーレイディスクレコーダーなど電化製品の開閉ボタンを押しまくって機械を壊したり、アニメの同じシーンをひたすら巻き戻して鑑賞したりすることも。また、キッチンなどの扉を勝手に開け閉めするので、親にとっては、扉の裏にある包丁で怪我をしないか、心配になります。子ども用のロックを購入して取り付けたそうですが……。

 このように落ち着きがなく、こだわりが強かったものの、コミュニケーションはとれる状態でした。

 

 しかし、Mさん夫婦にとって心配なのはむしろ弟のほうで、目が離せませんでした。生まれた当初はよく寝たため育てやすいと思われたものの、1歳半ごろに高熱を出して以降、状況が一変します。両親の言葉にほとんど反応せず、親子間の会話は成り立ちません。

 

「視線がまったく合わなくなったというのがすごく印象的で、呼びかけても返事をしなくなり、独り言を繰り返すだけ。言葉を覚える様子がまったく見られない状態でした。癇癪がひどいですし、自傷行為もありました」と母親のMさん。着替えやトイレなど身辺自立もまったくできませんでした。

 

 不安になった両親は市が開く健康診断の場で専門家に相談します。「周りの子どもは比較的落ち着いてお母さんの近くにいるんですけれど、うちの子はだいぶタイプが違う」と父親のMさんは気づきます。結局、「自閉スペクトラム症」の診断を受けました。

 

 どう対処していいかわからなかった両親はその後、療育に通わせます。父親は当時を振り返りました。

 

「最初にお願いしたところは、預けた子どもを遊ばせてまた帰ってくるといったところでした。預かってもらっている間はこちらも休憩になるんですけれども、そのことによって子ども自身が成長していくところはなかなかなかったです」

 

 「適切な対応によって子どもの状態が変化する」という肝心の問題が解決の糸口をつかめないまま。不安は蓄積するばかりです。

 

診断を受け止めたあと、相談し、家での接し方・教え方を変える

 

 しかし、母親は少し違いました。当時、一人で息子二人の子育てに関わるのが大変で、実家に帰っていました。そのこともあり、「自閉スペクトラム症」という診断をきっかけに、大きなショックの中で「わが子に発達の遅れがあること」をしっかり受け止めました。そして、「仕方がない」ではなく、「なんとかしよう」「参考になる情報を集めよう」と気持ちを切り替えたのです。

 

「これから前へ進むために何をしたらいいのかということを考えるようにしました」

 

 これが母親の言葉です。やがて1冊の本に出会います。その『自閉症児の学ぶ力をひきだす』『発達の遅れが気になる子どもの教え方』の中には具体的な実例がたくさん紹介されていました。その本がきっかけとなった相談と学習開始直後の様子はすでに触れたとおりです。

 

 教室からのアドバイスを参考に家庭での接し方・教え方を見直し、学習習慣を身につける練習がいよいよ始まりました。

 

 兄の学習は父親の担当です。

 

「兄のほうはひらがなや漢字を読むことはできるんですが、書くことが苦手なタイプといいますか、ひらがなの字の形も思い出せなくて書けないところがある。書くのに1時間ぐらいかけたこともあったと思います。それも半分泣きながらという感じでした。

 教えるほうもどうしていいかわからなかったんですけれども、何度も繰り返して、必ず最後まで取り組ませることを徹底するようにしました。子どもと対面でやりました。そうすると、子どものほうも変化が出てきました。最初は『やりたくない』。いまでもなくはないんですけれど、『やらなくちゃいけないんだ』と思って取り組んでくれるようになったと思います」

 

 弟のほうの学習は母親が主に担当し、現在に至ります。

 

「弟のほうは最初、絵カードから始めました。果物の名前、動物の名前、乗り物の名前のカードを使って一つひとつ教えていきました。数字に関しては1から10のマグネットを順番に並べる練習をしています。

 覚えるのに半年ぐらいかかりました。こんなに時間がかかるので、『この先、どうなってしまうんだろう』と不安と心配がありましたが、半年経って1から10まで並べることができた時はとても感動したことをいまでも覚えています」

 

 以後、1から50、100までをひたすら練習し、覚えたあとは足し算や引き算の学習へ。

 

「毎日、対面で暗唱を一緒にやりましたが、足し算、引き算に関して暗記はけっこう早くできたのかなと思います。現在、2年生では3桁の足し算・引き算をしています。手順を覚えるのがけっこう得意で、1桁の暗唱の練習の成果を実感しております」

 

 両親の言葉の中に効果的な学習の秘密がありそうです。

 

カード練習の最大の狙いは「しっかり見ること」

 

 弟に対して行ったカード練習の狙いについてエルベテーク代表の河野俊一さんはこう補足的に説明しました。

 

「カードを使ったのは、数字やひらがなを覚えるのではなくて、むしろ、どこを見たらいいのか、見るべきものはなんなのか、目をそちらへ向けて見ることを練習するためです。Mくん兄弟のように『発達の遅れ』をもつ子どもは見ることがなかなかできない。見ることがよくわからない。ところが、わかってくると、先生の口の形をまねて、息を出したり口をすぼめたりを少しずつ覚え、返事ができるようになっていったわけです。

 『Mくん』と呼ばれた時に『はい』と返事をする、『なになにをします』と言われたら「はい」と返事をする、注意をされたら返事をする、『お帰りなさい』と言われたら返事をする……。このように返事を覚えていくと、本人も『そういうことなのか』と少しずつわかってくる。結果として、数字やひらがなを覚える学習の成果につながっていきました」

 

 しっかり見る→大人の仕草をまねる→返事をする→ルールや手順を少しずつ理解する→数字やひらがなを覚える……。そんな学習の流れを地道に追いかけていくからこそ効果が上がるという説明です。反対に、しっかり準備もせず、目先の数字やひらがなを覚えることだけを求めていてはなかなか効果を期待できないでしょう。

 

 Mさん夫婦はこうしたアドバイスを聞き、工夫しました。

 

「教室から『家でも視線を合わせてください』という課題が出た時に、子どもの顔を押さえて目を合わせる練習をしましたが、顔はこちらを向いているのに視線だけ天井や壁を見ていて、視線はまったく合わないことに気づきました。それから、視線を合わせる練習を毎日しました。視線がしっかり合わないとおもちゃを出さないとか、目を合わせてから食べ物を渡すなどの工夫をしました」

 

 一例として、おもちゃをあえて子どもの手の届かない戸棚の上に保管し、子どもが親に向かって「やりたいので、取ってください」と言わせ、コミュニケーションの練習になるような工夫も取り入れました。

 

 なかなか効果が現れないなか、地道な練習にへこたれそうになった母親のMさんですが、教室から「視線が合うようになるまで1年ぐらいはかかります」と聞き、「もっと頑張れば、もしかしたら目が合うようになるかもしれない」と希望をもったそうです。親や大人の根気強さと前向きな気持ちが問われる瞬間です。

 

「階段状に成長する」ことを実感

 

 やがて弟の変化を前に父親が実感したのは次の事実です。

 

「うちの子だけに当てはまることなのかわからないんですが、子どもというのはずっと停滞している期間が続いて、ある時、急に伸びるのかなと思います。直線的に成長していくのではなく、ある程度、階段状に成長していくところが見受けられました。こちらも頑張って継続して教えて取り組ませて、気づいたら半年前、3ヶ月前よりも少し成長しているなというところをモチベーションにしていました」

 

 成長という言葉はよく使われますが、中身が曖昧なのも確かです。準備段階として「学ぶ姿勢」に気を配りながら練習・学習を継続すると、それがある時、学習面や生活面で実を結び、親にとっては階段のような成長に見える……、体験したMさん夫婦だからこそ実感できた事実ではないでしょうか。セミナー参加者の共感を得た発言でもありました。

 

 その内面の成長が就学に際して役立ちました。年少から学習を開始した兄はやがて入学を迎えることになりましたが、落ち着きがないため、両親は教育委員会の判定に従って特別支援学級へ進むのが妥当だろうと一度は考えました。

 

 しかし、力がついてきたことを理由に「ひじょうに成長できるところがあると思います」という教室からのアドバイスを受け、また入学までの手順についての助言を信頼し、普通学級(通常学級)へ入学するべく方向転換。

 たとえ教育委員会から「登校から下校まで付き添ってください」と言われても、覚悟の上の決断でした。入学に際しては現時点の発達状態と「指導上配慮していただきたいこと」をまとめたレポートを学校側へ提出しました。

 

 弟のほうも教育委員会から「特別支援学級へ」との判定をもらったものの、普通学級へ進みます。学習面は簡単な足し算や引き算、五十音のひらがなとカタカナがやっと書ける状態。言葉も片言で、両親には集団生活での不安があったのは確かです。

 

 教室に相談したところ、「周りを見て行動できつつあるし、他のクラスメイトに囲まれたほうが伸びる可能性がある」という経験談を聞き、普通学級への入学を決断しました。

 

 このようにして二人とも普通学級に入りましたが、入学に当たって必要な力とはなんでしょうか? 河野さんからの補足説明です。

 

「離席して教室を出る、危ないことをする、大きい声を出す、癇癪を起こす、そんな状態でしたら担任の先生も大変です。しかし、『このように接したら言動をコントロールできるので、力を貸してほしい』とみんなに協力していただく形で入学されました」

 

 特別支援教育のあり方について興味深い指摘にもなったような気がします。

 

学習による成長の変化と学校との連携

 

 最後に、最近の学校生活も紹介されました。

 

「兄のほうですけれども、学校へ通い、授業をきちんと受けて日々過ごしています。ただ、予定の急な変更があると不安になってしまいます。時間制限に対してのプレッシャーも感じやすく、『テストは何時何分まで』と言われるとパニックになります。幸い、クラスメイトの子が宥めてくれたり、担任の先生もご理解し配慮していただいています」

 

 父親の話によると、ある時、テストが終わった授業中の待ち時間に勝手に本を読んでいるという連絡が担任からあったそうです。度を越した本好きが災いしたのです。母親はその後の対応を次のように紹介しました。

 

「主人と考え、ルールとして3年生になってからは待ち時間には本ではなく教科書や他のことをするよう本人に伝えました。手元に本がなければ読まないのではないかと考え、担任と相談して、授業が始まったら本を先生に預けるようにしました」

 

 母親は弟への対応にも触れます。

 

「弟のほうは、気が散りやすかったので、座席を一番前にしていただき、なるべく先生が見えるところで、声をかけやすいところにお願いしておりました。黒板の文字を板書することが苦手ですが、学校生活は特に問題なく送っています」

 

 苦手の克服には練習よりほかに方法はなく、今後も練習を続けるしかないと思われます。

 

 一連の学校側とのやりとりについて河野さんはその本質的なポイントを指摘しました。

 

「なにか問題があれば、先生と連携するために相談された。大事なところです。いま、ルールや約束事が見過ごされ、曖昧になってきていて、学校の先生方も悩んでいらっしゃる。しかし、家庭と連携して同じ方向を向いてやっていくと親もありがたいし、先生のほうも教室運営がやりやすくなりありがたいのではないかと思います」

 

 Mくん兄弟のほうも気持ちのコントロールが確実にじょうずになりました。

 

「先生が『いまからこうする』と言ったら、本当は『やりたくない』という気持ちがあっても、そこでやめられる、ルールを思い出して気持ちを切り替えることができるということが大事ではないかと思います」

 

 これも河野さんの評価の言葉です。

 

課題の克服と朝学習の継続

 

 さて、現在の家庭生活のほうはどうでしょうか。家庭学習の時間を確保するため、すでに5年以上、父親が朝早起きして毎朝、20〜30分の学習をみているとのことです。

 

 また、テレビやゲーム、ユーチューブの視聴は没頭してしまうことになるので、なるべく避け、その代わりトランプやカルタ、パズルなどで親子が一緒に遊ぶ時間を増やしたとか。

 

 エピソードも紹介されました。本好きなお兄ちゃんは昨年、3年生の時に宇宙をテーマにした作文コンテストに応募。見事に県の最優秀賞を受賞。学校の成績も良く、「ロケットや探査機をつくるエンジニアになりたい」と将来の夢を語ることもあるとか。弟も兄の影響を受け、自動車を修理する技術者になるのが夢だそうです。兄の背中を見て育っているのではないでしょうか。

 

 しかし、母親のMさんは現状に満足することなく、課題をしっかりとらえています。次の発言からも兄弟二人の現在の課題と両親の姿勢がよくわかります。

 

「ここまで説明させていただくと、非常に良い子みたいな印象をもたれるかもしれないんですけれども、当然、まだ課題もありまして、特に上の子のほうは非常に知識をもっているぶん、それが漏れてしまうというか、自分の思ったことがすぐ言葉に出てしまうタイプなんですね。この場面で言うべきではないことも言ってしまうという課題がまだあります。

 何かしている時に疲れてしまうと「疲れた」とか、お昼が近くなってくると『もうお腹が空いてなにできない』みたいなことをよく言ったりします。それから、先生が授業で説明している時に『あ、これ僕、知っているよ』と言ってしまいます。まだ余計なことを言う課題がありますので、場面ごとに適切な対応をとるよう指導しているところです」

 

 弟へは今後も基本的な対応が続くものと思われます。

 

「弟のほうは、これからも、口を閉じる、視線を合わせる、手元を見るという基本的なことに力を入れていきたいと思っています。話すことについては、自分の気持ちをなかなか人に伝えることが苦手なので、少しずつ成長していけたらなと思っています」

 

 そして、父親の視点から語られた、「人の話を黙って聞く力を身につけないといけない」という言葉が子育ての核心を突いているような気がしました。

 

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【参考 アンケート】(全部で36通。その一部を原文のまま紹介します)

 

●保護者の体験発表についての感想-1「日頃、子育て・教育で気になっていることは?」の回答

 

 

・就学前の保護者の声

 

「発達の遅れがある子どもが今後幼稚園に行ってやっていけるか、小学校は普通級に通えるか、普通級に通えても本人が困ったりいじめられたりしないかなどが不安です」(2歳の保護者)

「現状は、言葉がでてないこと。本日、話をきいたことを参考にしたい」(5歳の保護者)

「5歳の息子が自閉症と知的障害のハンデを抱えています。発語と身辺自立が直近の不安です。将来的には、自分で生きていける力をつけさせること」(5歳、小1の保護者)

「小学校への普通級への進学」(6歳の保護者)

 

・小学生の保護者の声

 

「独り言が多い 甲高い声(奇声)をあげることが多い 行動が遅い(着替え、食事など生活全般)」(小1の保護者)

「子育てを通じて親が成長させてもらっている。とても実感します。そして…子どものために私がもっと成長しなければ、と感じています。発達に遅れのある子を育てていると、忍耐が必要。イライラしないアンガーマネジメントが必要と日々感じます。が、思うようにいかず、凹むことが多々あり、悩みます」(小3、小1の保護者)

「支援級に通っていますが、このままでいいのか不安になっていました」(小4の保護者)

「とにかく、漢字など定着がおそく、おぼえる事が、できない。ですが、あきらめないで勉強するのが、大切だと思いました」(小4の保護者)

「もうすぐ中学生だが、公立の中学校の支援級を目指せるのか、支援学校が良いのか悩んでいる」(小5の保護者)

 

・教育関係者の声

 

「「いやだ」「絶対にやらない」と何事に対しても言ってくるようなお子さんへの対応 いやな事にも取り組ませる手段や言葉がけなど」

「小学校で管理職をしています。保護者との連携という点では、うまくいっているケースよりも苦慮していることの方が多いです」

「普通学級の中で、発達に課題を抱える子どもたちを含めた学級経営、学習指導の在り方など。悩んでいる先生方が多いのが現状です」

「ASDの児童……不安で?やりたくない授業には、参加しない。見通しか、作業手順か……手探りしているが、どうしていいかわからない。図工・音楽に取り組めない」

 

・保育関係者の声

 

「こだわり行動が気になる。ひらがなや数字、アルファベットがすき。しかし、友達との関わりがない」

 

・療育関係者の声

 

「進路について、将来について考えるようになった」

 

●保護者の体験発表についての感想-2「特にどの部分に共感されましたか?」の回答

 

・就学前の保護者の声

 

「「見る」、「見させる」ことが全ての始まりであること」(3歳の保護者)

「御両親で学習を指導している点」(4歳の保護者)

「両親が協力して、2人のお子さんをみていること。りせい的に対応していること」(5歳の保護者)

「夫婦で力を合わせて協力しているところ」

「「子どもの成長は直線的に右肩上がりではなく、階段上に上がる」というところ。まず、見ること、そこから真似が始まる、そこから学ぶとか、コミュニケーションが生まれる」(6歳の保護者)

 

・小学校の保護者の声

 

「粘り強く関わりを持てば成果は必ず得られる所」(小1の保護者)

「“階段のように成長していく(成長を感じられない時期もある!が)必ず成長する”という言葉に勇気づけられました」(小3、小1の保護者)

「お兄ちゃんと同じ学年だったので、まずは、その年齢での成長に(きちんと挨拶ができ、聞く力をつける)共感しました」(小4の保護者)

「まだ言葉がでない子に対しての取り組み」(小4、2歳の保護者)

「「成長する。」を信じて学習をあきらめないこと。「相談者」と一緒に考える」(小4の保護者)

「いくら教えてもなかなか成長せず不安になることも、長い目でみてあきらめずに教えていく」(小4の保護者)

「目を見て指示にしたがえるのか、私も目を見ないで伝えてしまっていると反省」(小5の保護者)

「子供の成長は階段のようだと。ゆるやかに成長でなく、急にできるようになる。できない時があっても、できるようになる時がくる。実際に我が子もそうなので共感しました」(小6の保護者)

 

・教育関係者の声

 

「ご両親の努力に頭が下がる思いです。状況が変わったときに、子供がそれに対応できるようにその度に工夫をしてこられたのがすばらしいです。能力とやる気を見極めるとの姿勢に共感します」

「発達障害と診断された子が教育によって大きく伸びていくということに驚かされました。兄弟を抱える両親のご苦労に頭の下がる思いです」

「保護者の協力が不可欠」

 

・療育関係者の声

 

「仕事での療育で役立てられそう ・目を合わせる ・約束・ルールを守る、伝える ・見る、なにをみるか みるべきことがわからない→教える  ・家庭との連携 ・毎日のつみ重ね」

 

●保護者の体験発表についての感想-3「『子育て(指導)のために役立ててみよう』と思ったことはなんですか?」の回答

 

・就学前の保護者の声

 

「目を合わせてコミュニケーションを取る、促し続けること」(3歳の保護者)

「注意することは、目をみて話す」(5歳の祖父)

「コミュニケーションを取らざる得ないような物の配置(おもちゃの場所)など、小さいけど毎日コミュニケーションを取れるような環境作り」

 

・小学生の保護者の声

 

「視線を合わせる、我慢する場面は我慢させる、気持ちをコントロールさせる」(小1の保護者)

「場合によっては兄弟別々に学習させる方が効果が高いこと」(小3、5歳の保護者)

「子の目を見る、日常でもこまめに取り入れる」(小3の保護者)

「目を合わせる、「はい」と返事をさせる その子の持っている課題を適切に把握し、対処していく」(小3、小1の保護者)

「朝学習をするところ」 (小4の保護者)

「仕事中に宿題をさせていましたが、少し一緒にやった方が良いのかも……と思いました」(小5の保護者)

 

・教育関係者の声

 

「粘り強く指導を繰り返すことの大切さを改めて感じました。環境調整を自分の関わる所だけでなく、教室・家庭に拡げたい」

「視線を合わせて、会話をする」

「注目させる 目を合わせること くり返し言い続ける」

「ルーティンの大切さ(生活リズムをととのえること)」

「視線を合わせること。あわただしい児童だと、「見て」という間もなく過ぎてしまうので、1日1回でも合わせられるようにしていきたい」

「何回かワードとして出てきましたが、「視線を合わせて」「返事をさせる」ことの重要性についてはとてもよく理解できました。保護者にも教員にもアドバイスできそうです」

 

●保護者の体験発表についての感想-4「教育・療育の現状についてのご意見・提言をお聞かせください」の回答

 

・就学前の保護者の声

 

「実例の共有 自分の子と同じような状態の子がどう成長・克服していったかを知れる環境が大切と思います」(3歳の保護者)

「子供の課題や今、保育園と連携してできそうなことが思いついたり、見えてきたりしました」

「支援級での学習面での成長を促すような姿勢があるといいなと思う。支援級に行くと子どもの将来性をとても狭めてしまうと思わせてしまう現状がとても悲しい」

 

・小学生の保護者の声

 

「エルベテークやセミナーでいろいろな親ごさんのお話をきく中で、また上の子の子育てを通じて、特に幼少期のかかわりがとても大切だと感じています(2才~6才)。私も、もちろん上手にできないことも多々ありますが、大変でも、地味でも、時間がかかっても確実にきくこと(効果があること)「目をみさせる」「口をとじる」をとにかくすることが大切だし土台になると感じています」(小3の保護者)

「療育に通っていてもなかなか先の見通しがつかないです。目標やどのような状態になったら学校で困らないかなどを教えていただきたいです」(小4、2歳の保護者)

「学校の先生方にも、いろんな先生方にこのようなセミナーをきいてほしいです」(小4の保護者)

「学校と連携していく大切さを感じました」(小6の保護者)

 

・教育関係者の声

 

「子の発達障害の程度もさまざま、親の考え方もさまざまです。互いに気持ちを寄り添いあって連携をしていかないと難しいのが現状です。今日のお話を参考にして頑張りたいです」

「・エルベテークの指導技術、指導法など、公教育の中に取り入れることはできないものでしょうか。 ・発達に課題のある子に適切に指導できない、現場の教師が多すぎます。それが学級崩壊の要因になっています。教員研修の中で特別支援教育に関する研修もあるのですが、それが日々の指導に活かされていないのが現状です」

 

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第28回も感染防止対策に気を配りながら無事に開催することができました。

 

 

埼玉県内、東京都内、千葉県内の10の教育委員会の後援名義を受け、また埼玉県内、東京都内、千葉県内、神奈川県内の教育委員会約40の協力も得て、各地域の小中学校、幼稚園などにチラシを配布することができました。福祉関係、医療関係、保育関係の各団体から後援をいただきました。ありがとうございました。

 (報告/2022年12月8日 知覧)

撮影 堀)

■次回(第29回)

 

[テーマ]

Sくん(中1)の努力が彼の力を伸ばし、みんなの意識を変えた

 

[プログラム]

お話(体験発表) 中1の母親Sさん

進行と解説 河野俊一さん(エルベテーク代表/医療法人エルベ理事)

 

[日時] 2022年11月12日(土) 9:30〜12:00(受付開始9:20〜)

 

[会場] 川口駅前市民ホール フレンディア(埼玉県川口市川口1-1-1  キョポ・ラ4階)

 

[定員] 50名(保護者、教育・療育関係者、医療・福祉関係者、市民など)

 

[参加費](資料代等) 1,500円

 

*コロナ禍の状況次第で、日時・定員等の変更の可能性があります。

*現状では、以下の感染防止対策を予定しております。

 

●通常の会場定員(机ありのセミナー形式の場合、81名)に対し、密集を避けるために定員(50名)での利用とします

●感染防止対策にご協力ください(入場の際、手指の消毒、マスクの着用、検温をお願いします)。

●発熱、咳、鼻水など風邪の症状がある場合は参加を控えていただくようにお願いいたします。