[REPORT]報告-子どもの発表会+ミニ観察会(2017年8月20日)

8月20日(日)に子どもの発表会[晴の助君の夏休み生き物かんさつ日記 と りのさんの自由研究 発表会](後援:埼玉県、埼玉県教育委員会、川口市、川口市教育委員会)を川口市のメディアセブンと川口西公園/リリアパークで開催しました。


【概要】

 

・子どもの発表-1 りのさん(小学2年生)の自由研究(色水のかんさつ)

・子どもの発表-2 晴の助君(小学4年生)の夏休み生き物かんさつ日記

・8月20日(日)10:00〜11:45 メディアセブン(川口市川口1-1-1キュポ・ラ7階)プレゼンテーションスタジオ

・参加者 約80名(うち親子は21組67名=大人38名+子ども29名 埼玉県11組、東京都6組、神奈川県3組、千葉県1組))

・参加費 500円(1家族)

・協力 エルベテーク

 

【子どもの発表】

 

 このイベントは、子どもが自身の興味・関心に基づいて自主的に行った観察を参加者の前で自ら報告する楽しい発表会です。身近なところに目を向ければ、さまざまな生き物・植物に出会う、その不思議さ、興味をもっと子どもたちに……という思いをみんなで共有したいと考え、エルベテークと協力しながら企画しました。

 

●りのさんの自由研究(色水のかんさつ)

 

 前半は、小学2年生の女の子、りのさんによる観察(「色水のかんさつ」)の発表でした。観察の内容は、黒、白、黄色、赤色などの色水を瓶に入れて戸外に置き、しばらく経つとその減り方が異なる様子を観察・報告したものです。

 

 取り組んだきっかけについて、りのさんは冒頭でこう話しました。

 

 「3人で色水遊びをしたあと、そのままにして後片づけをしませんでした。午後、片づけるとき、黒の色水は減っているのに白はあまり減っていないことに気づきました。色によって減り方が違うのかなぁと、とても不思議に思いました。それで実験してみることにしました」

 

 相対的に黒の色水が太陽光を最もよく吸収し、高温になるため、水分の蒸発が多くなる、一連の事実を、秤や計量カップなどで正確に計測しながら、また論理立てて発表してくれました。今年の夏は日照時間が極端に短かったため、日光が頼りのこの実験では少々難儀したようですが……。

 

 発表の最後のほうになると、兄弟2人が協力し、りのさんの発表を盛り上げました。弟さんが、色彩の楽しさを伝える絵本『6つの色』(戸田幸四郎著)を読むなど、微笑ましい光景でした。

 

●晴の助君の[夏休み生き物かんさつ日記]

 

 後半は、身近な生き物に興味をもつ小学4年生、晴の助君が、昨年、一昨年、今年と、近くの公園や空き地を回り、大好きな生き物を観察した結果を発表しました。また、自ら飼育している小動物についても触れました。

 バッタ、カマキリ、アブラゼミ、アオスジアゲハ、カブトムシ、サワガニ、ヒキガエル、ニホントカゲ……などの生き物が取り上げられました。

 

 晴の助君は、自然の中の生き物の姿や成長の様子、そして彼がつけたあだ名などを、作文、写真、スケッチに〈夏休み生き物かんさつ日記〉としてまとめています。

 

 その日記を元に発表しました。たとえば、こんな感じです。

 

 「8月23日 おとといの夜、さなぎの色が変わっていました。昨日の朝、見にいったら部屋の中でアゲハチョウが飛んでいました。サナギを見ると空っぽでした。サナギからチョウが誕生したのです。元気に育ってくれてよかったと思いました。お母さんも『かわいいね』と言っていました。きれいでした。テラスから逃がしてやりました。たくましく生きてほしいです」

 

 自分で企画し、観察し、考え、まとめた点が特に素晴らしいと思います。中でも、生き物の形態と特徴をしっかり把握したスケッチには参加者の多くが感心していました。

 3年間の記録を通して見ていくと、2年生から3年生へ、3年生から現在の4年生へと成長するにつれ、彼のイラストもまた技術的に成長し、説得力をもってくるのが誰の目にも明らかでした。

 

 りのさんも晴の助君も、緊張していたとはいえ、堂々と発表してくれましたが、それは実際に自分が捕まえたりよく観察したりして、「きれいだ」とか「おもしろい」「不思議」と感じながら自分で知識を深めたためではないかと思われます。「借り物ではない、自分の知識」がここにあるように感じました。

 

 2人の発表が終わると、参加者との間で質疑応答を行いました。意外なことに、子どもたちの挙手が多かったのも印象的でした。


■りのさんの自由研究

■晴の助君の[夏休み生き物かんさつ日記]

 

【ミニ観察会】

 

 発表会のあとは川口駅西口の川口西公園/リリアパークで観察会を開催し、20名以上の親子が晴の助君とともに観察のポイントを学びました。

 驚かされたのは、晴の助君が「あ、あそこにいる!」と言うやいなや、近くの木に近づき、表面にしがみついていた生き物を素手でさっと捕らえたことでした。なに食わぬ顔の晴の助君の手はアブラゼミをしっかりつかんでいました。「網を使うのは素人。プロじゃない」というのが晴の助君のコメントです。

 

 こうなると、大人も子どもも観察のスイッチが入ります。晴の助君に「オスなの? メスなの?」などと質問し始めます。晴の助君は、ばたつくアブラゼミの腹部を示しながら、「ここでわかるんだよ」と説明。そして、他の子どもにもアブラゼミを渡し、みんなで小さな生き物の力強い動きを実際に触り、具体的に知りました。

 そのほか、晴の助君は、どこからともなくショウジョウバッタやヤモリを発見し、周りの大人や子どもに見せていました。

 

 いっぽう、晴れの助君に見習って、木に止まったアブラゼミを見つけたものの、手でつかもうとすると、すぐに逃げられてしまった、そんな苦い体験の大人もいました。

 

 ミニ観察会に参加したある保護者は「川口駅の近くにこんないい公園があるなら、これから寄ろうと思う」と話してくれました。私たちのスタッフの間でも当初は、「フラワーポットがあるだけで、虫なんているのだろうか?」「虫がいなかったら、どうしよう」と話していたのですが、実際にでかけてみるとその不安は良い意味で裏切られました。虫除けスプレーも不要でした。


■ミニ観察会

【アンケート】(全部で14通。その一部を原文のまま紹介します)

 

●りのさんの自由研究について

 

「不思議に思ったことから発展させ、実験・観察へと興味を昇華していて素敵なことだと思いました。興味を学ぶ力へと導かれて素晴らしいです」(年長の保護者)

 

「色水の違いにより減り方が異なる点、ラップをかけてみるなど、自然の現象に細かく目を向けることで、多くの気付きがあると判った」(小学1年生の保護者)

 

「“ふしぎ”と思ったことを、研究してみようという動きになることがとても自発的で、その行動に興味を持った。また色の絵の具のかんさつもするどいことに感心した」(小学2年生の保護者)

 

「色水の減り方についての研究でしたが、難しかった所や研究の様子など写真入りでとてもわかりやすかったです。弟にじゃまされてという所もほほえましかったです」(小学2年生の保護者)

 

「実験のまとめ方など、とても参考になりました。2年生とは思えないほど発表も上手で感心しました」(小学3年生の保護者)

 

「ご兄妹で力を合わせて、すてきな関係だなと思います」(小学4年生の保護者)

 

●晴の助君の夏休み生き物かんさつ日記について

 

「昆虫、とかげ等がとても好きなのだなと伝わってきました。とても絵が上手で発表も上手で、よい発表会をみせて頂きました」(年長の保護者)

 

「とにかく生き物への愛を感じました。以前同じ社宅に住んでいたこともあり、気づいた時には(幼児の頃から)既に昆虫に触れていた晴の助くんでした。なので、2年生から始めた昆虫記はもっと前から始まっていたんだろうなと思いました。見てわからないことは図書館で調べたり、近所の人から情報収集したり、多方面から確実に調査していて感心しました。小さい頃から寄り添って生き物にむかう様子もとても感じました。お話もとても面白くはっきりしていました」(小学2年生の保護者)

 

「かなへびの事、かぶとむしの事、ひきがえるの事、単なる観察でなく、友達や親子のやりとり、背景なども説明してくれ、興味深くききました。日常の中で、自然の中から種々の事を感じとり、自ら、調べ学び成長する姿が良いです」(小学1年生の保護者)

 

「2年生〜4年生までの研究がすべて生き物であることから“好きだ”ということであると思うが、“好き”こそ本当の研究になっていると思われた。大人でもハッとすることを気づいていておどろいた。自発的に調べているからこそ、見る方も楽しくなるし、絵がうまくなっていることも含めて成長が楽しい。お父さんの“自分の時間をどれだけつかっているか”がすばらしい」(小学2年生の保護者)

 

「生物がとても好きな事がよくわかる素晴らしい発表でした。絵もとても上手で感心しました」(小学3年生の保護者)

 

「興味が全てを引き出していると感心しました」(小学4年生の保護者)

 

●質問「これから親子でどんなことをしてみたいですか?」への回答

 

「子どもの興味のもつものをみつけていきたいと思いました」(年長の保護者)

 

「住んでいる地域に野鳥がたくさんいるので観察したいと思います。散歩中、オスのキジや、池にはオオバンが泳いでいるので息子に教えたいです」(2歳の保護者)

 

「今の子供には、見る力、見た物から色々な情報を抜き出す力が課題で、自然の中でも練習できると感じた」(小学1年生の保護者)

 

「先月から、かぶと虫とクワガタを飼っているので、頑張って育てていきたいです」(小学3年生の保護者)

 

「子どもの興味がある事を生活の中で見つけてあげたいと思いました」(小学3年生の保護者)

 

「せみのう化に挑戦してみたいです」(小学4年生の保護者)

 

「ただ公園に行くだけでなく、木や草むらで、興味が出るよう、うながしていきたいと思いました」(小学4年生の保護者)

 

■■■

 

 参考までに、発表会に先立って2人の子どもと話し合った時の会話を紹介します(発表会当日に参考資料として配布しました)。

 

《晴の助君》

 

 最初に捕まえたのはバッタでした。

 今は普通に慣れて、でっかいバッタ見ても「あ、なんだ。でっかいショウジョウバッタか」という感じだけど、昔はちっちゃいのを「いっぱいいる、いっぱいいる」って捕まえて、でかいのを見ると「うわぁ、でかい!」みたいな……、すごくびっくりしてた感じでした。

 大きいのはあまり獲りませんでした。当時はけっこう怖かったです、なぜか。

 

 夕方とか夜は、穴からぽこっとセミの幼虫が出てきたりします。たまに木に登ってきたり、穴から出てくる瞬間を見たこともあります。家の窓から庭が見えるんです。

 あとは、公園で「あ、セミの穴だ。ちょっと掘ってみよう」と思って掘ってみたら、セミの幼虫がいたんですよ。うにゅうにゅ動いていて、どんどん奥に行っちゃったから、獲りませんでしたけれど。

 

 発表は初めてです。他の人に「これはこうだよ」って話したぐらいです。2年下のいちばんの「虫友」も来ます。ぼくの「かんさつ日記」をきいてください。

 

《りのさん》

 

 虫はこわいし苦手だけど、花はとても好きです。小学校で行った「たんざわわくわくスクール」では、花でチューリップをつくりました。外で遊ぶのは気持ちがいいです。一年生の時のチューリップを植える行事も楽しかったです。動物もネコとか好きです。ハクビシンは可愛いなと思いました。

 

 みんなの前で話すのは、はずかしくて苦手だけれど、がんばります。

 

■■■

 

 ところで、子どもたちに対し私たち大人は、「自然環境」「地球」「環境教育」などという大げさで漠然とした言葉を使って「自然の大切さ」を伝えようとします。しかし、案外、大人も子どももすぐそばの自然に触れる機会・楽しさ・大切さを忘れてしまっているのかもしれません。

 

 昆虫図鑑やゲーム、テレビ、教科書の中で目にすることはあっても、いま生きている生き物に直接触れる機会は非常に少なくなったと痛感しました。まず、具体的で身近な体験を親子一緒に共有することがいかに大切か、改めて確認しました。

 アゲハチョウやモンシロチョウ、赤トンボ(アキアカネ)やてんとう虫などを見かけたら、大人も子どももちょっと立ち止まって観察してみたいと思います(もちろん、草花でも)。

 

 普段はなかなか気づかないけれども、都会の中にはそれ相応の自然があり、その中でさまざまな生き物が生息していることを、このミニ観察会で多くの親子が知ったのではないでしょうか。今回のミニ観察会は、予想以上の収穫だったと感じました。

 

 小さい頃から、自然に親しむ、もう少し詳しく言えば、自然という客観的な事実に触れる、そうした態度を養うことは、その子のバランスのとれた成長にとって非常に意味をもつのではないかと思います。子ども自身がテーマを見つけ、積極的に取り組むのならば、なおさらです。

 

 もちろん、自然がつくる形や色の見事さに子どもながらに驚いているのだろうと想像します。

(撮影 堀、柳元)