[REPORT]報告-セミナー第6回/少人数による懇談会(2017年8月25日)

連続セミナー「わが子の「発達の遅れ」に直面した保護者とともに考える」第6回を川口市のメディアセブンで開催しました。今回は、セミナー参加者を対象の、少人数による懇談会としました。


【概要】

 

・少人数による懇談会

・質疑応答 河野俊一さん(エルベテーク代表/医療法人エルベ理事)、エルベテーク講師

825日(金) 10:4012:30 メディアセブン(川口市川口1-1-1)コミュニケーションスタジオ

・参加者 6名(保護者3名)

・参加費 500円(資料代)

 

【質疑応答】

 

  第6回は、これまでのセミナー全5回の内容を踏まえ、要望の多かった少人数による実践的な懇談会を初めて開催しました。保護者の質問に答えながら、同時に指導例に基づいた具体的なアドバイスを送る場となりました。

 夏休み期間中ということもあり、参加した保護者は5歳の保護者、4歳の保護者2人の3人(子どもは全員長男)でしたが、いずれの母親も就学前の問題を抱えていたため、より個々の課題・問題に即した話し合いになりました。

 

〈前半〉

 これまでセミナー参加者から要望の強かったテーマ——言葉の遅れ、こだわり、多動、偏食、覚えられないなどの課題に対する子どもへの接し方・教え方、家庭学習の進め方、学校生活/学校との関係など——について質疑応答の形で河野さんからお話がありました。

 「「発達の遅れ」に対して保護者なら「どうにかして最低限の力をつけさせたい」と思うはず。しかし、「特別な子ども」ととらえてしまうから、「無理をしない」となる……」。ここに大きな問題点が隠れているのではないかという指摘でした。

 

 そして、就学の問題点に関しては、普通学級、特別支援学級、特別支援学校のどこに通わせればいいかの議論が中心になってしまう現状が取り上げられました。学校選択にだけ注目してしまう結果、就学前のわが子の課題がしっかり把握されているか、それを学校の先生方と協力しながら改善していくという目標が見失われがちになっているのではないかという指摘でした。

 

〈後半〉

 それぞれの保護者が抱える問題について個別に質問を受け、効果的な対応の仕方について話し合いました。

 

●Aさんのケース

 

 Aさんは学校選択についての戸惑いを口にしました。病院では「ぜんぜん大丈夫。なぜ特別支援学校へ行くの?」と言われ、見学特別支援学校では「特別支援学校はいい」と言われ、混乱してしまうとのことです。

 子育てで困っていることとして、視線が合いづらい、こだわりなどを挙げました。学校のホワイトボードの絵カードがいつもの場所にないとそれだけで癇癪を起こすそうです。母親がいると甘えが余計に多くなるのでは、という感想をAさんは述べました。

  また、言葉はしゃべれるものの(要求は言うものの)、会話のキャッチボールはできないとのことです。

 

●Bさんのケース

 

 Bさんの心配な点は、息子さんが幼稚園でできないことや思うようにならないことに直面すると、すぐに泣いてしまうことだと言います。気持ちのコントロールができないため、ということは親としてわかるものの、どのようにすれば収まるのかがわからない様子でした。

 泣くことは毎日1回あるとのことで、現状が続けば、どうすればいいか、小学校生活が送れるのだろうかという不安がBさんにはたえずあるそうです。なお、息子さんは「幼稚園に行きたくない」とは言わないとのことです。

 なお、Bさんから見て、読み書きの問題は特にないだろうとの感想でした。

 

●Cさんのケース

 

 Cさんは、息子さんの課題として言葉の遅れを挙げました。二語文程度の要求がほとんどで、会話にならないとのこと。おうむ返しもあるそうです。最近は、「嫌」と言うようになったものの、Cさんとしては何が嫌なのかがわからず、どうしていいかわからない状態とのこと。「時間が解決してくれるかな」という感じになっているそうです。

 就学に関して、相談した病院からは「特別支援学級には行けるのでは」と言われたそうで、現在は特別支援学級をめざし入学前にいかに力を伸ばせるかと思っているとのことです。

 

●河野さんと講師の方からのアドバイス

 

 河野さんからは、まずは「変えなくてはいけない」と思うことが大切だとの指摘がありました。それが出発点となり、協力者を求めていくと、どうしたらいいかがわかる状態→家庭で実践して手応えを感じる状態という変化が少しずつ期待できるとのことです。

 「子どもがかわいそう」「無理をさせてはいけない」という情緒的なアドバイスに頼ると、当初の「変えなくてはいけない」という気持ちが揺らぎがちになる問題点について河野さんは強調しました。

 

 エルベテークの講師からは、「私たちが22年間教えてきた子どもたちは、皆さんのお子さんよりもっと重い課題を持った子どもばかりでした。皆さんは家庭できちんとした接し方・教え方をすれば、現在の子育ての不安はかなりなくなるでしょう」という内容の話がありました。

 そして、接し方・教え方の最初の入り口は、応じる姿勢を身につけることだと指摘しました。その応じる姿勢を身につけさせるために、しっかり相手の目を見て話す、相手の目を見て話を聞く、返事をする、挨拶をするといった習慣を親として育てていく必要があるとの指摘です。

 

 家庭生活で活用できる具体的な接し方・教え方として、次のようなものが示されました。

 

(a)「はい」の活用(子どもも自分に号令がかけられ、やる気が引き出される効果が大きい)

〈例〉わが子の目を見て静かに「しません」とだけ言う→子どもがぐずぐずしていると「返事は?」と問いかける→子どもが「はい」と返事をする→すかさず「それでいいです」と応える

 

 目を見る、返事や挨拶などというと、「作法にすぎない」と捉える向きもありますが、子どもの成長の基盤をつくるための大事な応じる姿勢を養うことにつながると言えます。時に「です、ます」調で会話を進めることも、家庭生活に良い緊張感をもたらせるのではないかと感じました。

 

(b)1本の線を鉛筆でゆっくり書く練習(学習を通してルールに従うことを学ぶ出発点)

〈例〉始点と終点を設定し、まず始点から終点までゆっくり1本の線を引く→鉛筆をなかなか始点に置けない場合には「ここよ」と気づかせ、また一気に書こうとしたら、「ゆっくりよ」と促す→その間、終点の位置を「ここよ」と伝えながら導く

 

 1本の線をゆっくり書くことの意義を多くの専門家は見落としていると思います。この練習は、目立たないとはいうものの、応じる姿勢やルールを守る力、見る力、聞く力などをじっくり養う練習です。その事実は、エルベテーク22年間の指導実績が証明していると言えます。

 

【アンケート】(全部で3通)

 

 ●参考になったこと

 

「1-目を合わせる為に学習を通じて学ばせる 2-教えていただいた、鉛筆を持って視点・終点を書く練習をしてみます」(Aさん)

「1-応じる姿勢のやり方 2-個別に対応策を教えてくれて良かった」(Bさん)

「1-意識して目を合わせて、話す 2-おうむ返しの止め方」(Cさん)

 

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 今回、参加された3名の保護者が家庭で実践してもらえれば、少人数による懇談会開催の意義はあったと思っています。

 参加されたある母親は川口市役所子育て相談課でセミナー開催を知ったそうですが、この少人数による懇談会の後、子育て相談課の担当者に「今までの子育てを見直してみます」と報告されていたそうです。

 

 いずれにしても、アットホームな雰囲気の中で情報交換し、日頃の悩みや子どもへの効果的な接し方・教え方を話し合う場にできたのではないかと考えています。

(報告/2017年9月8日 知覧)